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【コラム】院長のためのスタッフマネジメント入門

コラム

こんにちは。医師転職支援会社の「メディカルプラスキャリア」です。弊社では、勤務医から転職しクリニックの院長となられた先生方からも、日々さまざまなご相談が寄せられます。その中でも特に多いのが、「スタッフマネジメント」に関するお悩みです。

院長の先生方からは、「診療よりも、スタッフのマネジメントで消耗している気がする」、「注意すると雰囲気が悪くなりそうで、つい言うのをためらってしまう」、「人が定着せず、採用と教育の繰り返しになっている」などのスタッフマネジメントについてのご相談を多く頂きます。クリニック経営の柱はもちろん医療ですが、その土台を支えているのは、受付・看護師・事務といった日々一緒に働くスタッフの存在です。

一方で、採用や育成、日々のコミュニケーションに頭を悩ませ、「気づけば人の問題ばかり考えている」という院長も少なくありません。今回は、そんな院長先生の負担を少しでも軽くしながら、「人が辞めない、人が育つ」クリニックをつくるスタッフマネジメントのポイントを、4つのステップに整理してお伝えいたします。

1:スタッフマネジメントの目的を整理する

まず最初に、スタッフマネジメントの目的を改めて言語化しておきたいと思います。「マネジメント」という言葉からは、「ルールを守らせる」「厳しく管理する」といったイメージを持たれる先生も多いかもしれません。しかし本来のマネジメントは、限られた人材・時間・設備をどう活かすかを考え、組織全体として最大限の価値を生み出すための「仕組みづくり」を指します。クリニックに置き換えると、スタッフマネジメントの目的は、例えば次のように整理できます。

【スタッフマネジメントの目的】
●患者様にとって「安心して通える」診療体制を維持すること
●スタッフ一人ひとりが、無理なく力を発揮できる環境を整えること
●院長先生お一人に負担が集中しないよう、役割と体制を整えること

つまり、スタッフマネジメントは「人を縛るためのルール」ではなく、「人が力を出しやすくなるための土台づくり」である、ということです。この視点に立つと、同じルールや指導でも、自然と伝え方が変わってきます。

【NG例】
「ちゃんとやってください」「何度も言わせないでください」
【OK例】
「こうしてもらえると、患者様がもっと安心できると思います」
「ここをそろえると、全員の負担がぐっと減るはずです」

「誰のための、何のためのマネジメントなのか」を院長先生とスタッフが共有できると、ルールや指導は押しつけではなく、「クリニックをより良くするための共通言語」として機能し始めます。

2:院長一人で抱え込まない仕組みをつくる

次のポイントは、「院長一人で全部抱え込まない」ための仕組みづくりです。開業当初は、スタッフも少人数で目の届く範囲にありますので、院長が直接すべてを見ることもできます。しかしスタッフが10〜20名規模になってくると、「愚痴や不満」、「相談ごとがすべて院長に集中する」、「シフト・人間関係・注意・指導など、細かな調整に時間を取られる」、「院長が最終判断してくれるまで動けない状態が増える」といった負担が一気に増えていきます。

ここで有効なのが、「パイプ役」「簡単な組織図」を作る事です。

2-1.パイプ役(橋渡し役)をつくる

パイプ役とは、院長とスタッフの間に立つクッションのような役割です。クリニックによりパイプ役をどなたに任せるかは異なると思いますが、院長の考えとスタッフとの考えの差を埋めていく人材を選定する必要があります。ではパイプ役候補と、その担う範囲を具体的にみていきましょう。

【パイプ役(橋渡し役)候補】
●事務長、マネージャー
●看護師長、リーダー看護師
●ベテランの受付、医療事務
●(場合によっては)クリニックに関わる配偶者

【パイプ役の主な役割例】
*スタッフからの相談・不満を、早めにキャッチして院長に伝える
*院長の方針や考えを、スタッフ向けに「かみ砕いて」説明する
*新人スタッフのフォローや、教育計画のサポートを行う
*注意や面談の場に同席し、感情的にならないようクッションになる

院長との橋渡し役に適したパイプ役を選ぶときには、「勤続年数」よりも、「人の話を一度受け止めて整理できる」、「院長の価値観を理解している」、「スタッフからもある程度信頼されている」といった資質を重視すると、うまく機能しやすくなりますので、まだ適任者が見つかっていない方は参考にしてみてください。

2-2.「ミニ組織図」で役割と相談ルートを見える化

次に、クリニックの「ミニ組織図」を作ってみましょう。紙1枚、ホワイトボード1枚で十分です。以下のような簡易図をスケッチしてみてください。

例)
・院長
└ 事務長(パイプ役)
├ 看護リーダー
└ 受付リーダー

※リーダーの下には、それぞれのチームメンバーがぶら下がるイメージです。

このような簡単な図を作り組織を可視化することにより、スタッフは「まずはリーダーやパイプ役に相談してよい」、院長は「細かい相談はリーダー経由で上がってくる」といった、相談の流れを共有しておくことができます。こうしたレポートラインが整うと、院長に集まる案件は「本当に院長が判断すべきもの」に絞られていきます。

3:日々のコミュニケーションを整える

体制を整えたら、次は「毎日の関わり方」です。同じルール、同じ評価制度でも、コミュニケーションの質によって印象は大きく変わります。ここでは、特に意識したい3つのポイントをご紹介します。

3-1.院長から「情報をオープンに」伝える

「スタッフから報告が上がってこない」とお悩みの先生も多いですが、まずは院長の側から、意識的に情報をオープンにしていくことが、お互いの信頼感につながります。例えば、「当日の診療体制や混雑状況」、「最近あった良い事例、改善したい事例」、「今後取り組んでいきたい方向性」などを、ミーティングや朝礼、終礼で簡単に共有していきます。

このような共有を行うと、「どうせ言っても分からないだろう」と思われがちな内容ほど、あえてスタッフに共有してみると、「自分たちもクリニックの一員なんだ」という感覚が育ちます。また、プライベートの内容でも良い事のシェアは効果的です。スタッフのことを理解するためにも、積極的な関わりを持って行動する事により、相手の考え方や行動も変わってくる可能性があります。相手を変えるのは難しいので、まずは自分のかかわり方を変える事をおすすめします。

3-2.「感謝」と「フィードバック」をセットにする

「いつもありがとう」、「今日の〇〇さんの対応、助かりました」といった言葉を交わすことは、お互いに最もコストのかからないモチベーションアップです。ポイントは、できるだけ具体的に伝えることです。「さっきの患者さんへの声かけ、とても安心されていましたね」、「混んでいる時間帯でも、笑顔を崩さず対応してくれていて心強いです」というように、「どの行動が良かったのか」を合わせて伝えると、スタッフは「自分のどこが評価されているのか」を自覚しやすくなります。また、感謝を心の中に留めず、しっかりと言葉や行動にして伝える事が重要です。

逆に注意や指導の際には、「人格」ではなく「行動・プロセス」に焦点を当てることが重要です。以下には例を記載いたします。

【NG例】
「あなたは本当に気が利かないね」
【OK例】
「この場面では、先にこちらを確認してから声をかけてもらえると助かります」

このように、具体的な行動レベルで伝えることで、スタッフ側も「責められている」という感覚ではなく、「改善のポイントを教えてもらえた」と受け取りやすくなります。結果として、指導がきっかけで関係性が悪化するリスクも下がっていきます。

3-3.定期面談で「不満の火種」を早めに拾う

不満やトラブルの多くは、最初は小さな違和感から始まります。その火種を早めに拾う場として、半年〜年1回の面談(1on1)をおすすめしています。

「最近、仕事をしていて嬉しかったことはありますか?」
「逆に、モヤモヤしていること・気になっていることはありますか?」
「今後、どんな仕事にも挑戦してみたいですか?」

面談では、例えばこんな質問から始めてみてください。面談の目的は、「評価を伝える」だけではなく、スタッフの本音や将来の希望(願望)を知ることにあります。話してくれた内容は、簡単なメモで構いませんので必ず記録し、次回の面談で「前回こう言っていたけれど、その後どう?」と触れてあげると、「自分の話を覚えてくれている」という安心感につながります。また、願望を聞いていれば、相手の願望を叶える行動をとる事により、さらなる関係が深まりますので、参考にしてみてください。

4:「辞めない・育つ」チームをつくる

最後のステップは、教育・評価・組織化という少し「仕組み寄り」の視点です。全部を完璧に整える必要はありませんが、「これだけは押さえたい」という最低限のラインを整理してみましょう。

4-1.教育:新人用「スタートセット」を用意する

毎回ゼロから口頭で伝えると教える側も疲れてしまいますから、簡単なフローやマニュアルを作成する事をおすすめします。

●受付〜会計の基本フロー
●電話対応の基本的な言い回し
●患者様への声かけのポイント
●クリニックとして大事にしている価値観(例:待ち時間が長くなるときの説明など)

こうした内容をA4数枚にまとめ、「新人スタートセット」として準備しておくと、教える側としては、説明の抜け漏れが減り、教わる側は、後で見返せるので安心感が増え、双方にメリットがありますので、活用してみてください。

4-2.評価:「何を見ているのか」を明らかにする

評価の有無は、スタッフの定着に大きく影響します。とはいえ、いきなり複雑な人事制度を入れる必要はありません。例えば、次のような項目を5〜6個に絞ったチェックリストから始めてみます。

●基本的な勤怠、時間の守り方
●業務スキル(レセプト、処置の補助、受付対応など)
●患者さんへの接し方
●チームワーク(他職種との連携・協力)
●前向きな姿勢、改善提案 など

こういったリストをもとに半年〜1年に一度面談で振り返ることで、スタッフは「自分が何を期待されているのか」「どこを伸ばしていけば良いのか」を具体的に把握できます。

4-3.組織化:役割と連絡経路を決める

最後に、「誰がどの範囲を見ているのか」を簡単に決めておきましょう。

●看護リーダー:看護スタッフ全体の業務調整、新人看護師の教育
●受付リーダー:受付・会計業務全体の管理、新人事務の教育
●事務長・パイプ役:スタッフからの相談窓口、院長への情報共有

といった形で、役割を名前つきで明確にしておくと、スタッフは「どの相談は誰にすればよいか」が分かりやすくなります。合わせて、「月1回の全体ミーティング(情報共有、方針共有)」、「必要に応じた職種別ミーティング(看護、受付など)」といった話し合う場を用意しておくと、「問題が起きてから慌てて話し合う」のではなく、「日頃から少しずつ調整していく」組織に近づいていきます。

5:まとめ

いかがでしたでしょうか。最後に本記事のテーマを簡単に振り返ります。

1.マネジメントの目的は「人を縛ること」ではなく、「人が力を発揮できる場を整えること」
2.院長一人で抱え込まず、パイプ役やミニ組織図で情報と役割を整理すること
3.日々のコミュニケーション(情報共有・感謝・フィードバック・面談)を整え、信頼関係を育てること
4.教育・評価・組織化の最小限の仕組みをつくり、「辞めない・育つ」チームを目指すこと

スタッフマネジメントを整えることは、院内の雰囲気や患者様満足度を高めるだけでなく、院長先生ご自身の心身の負担軽減、採用、定着のしやすさ向上、働きやすい風通しの良い環境、そして自分が困った時や悩んだ時に大きな力として、支えてくれる人材確保、教育にもつながっていきます。「採用を含めて体制を見直したい」、「マネジメント負担が大きく、働き方そのものを考え直したい」、そのようなお悩みをお持ちの先生は、一緒に現状を整理してみるのも一つの方法です。

メディカルプラスでは、院長先生のキャリアやクリニックの将来を見据えたご相談(経営支援)も承っています。まずは今の状況を聞いてほしい、また採用・体制づくり・将来の承継について、幅広く相談したいといった段階からでも大丈夫です。どうぞお一人で抱え込まず、気軽にご相談いただければ幸いです。

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