こんにちは。医師転職支援会社の「メディカルプラスキャリア」です。本日は「ゼロからの開業はもう古い? 第三者承継(M&A)で開業するメリットと、紹介会社が知る『良い案件』の見極め方」をテーマにお届けします。
医師としてキャリアを重ね、30代後半から50代に差しかかると、「自分の理想とする医療を実現したい」、「組織のしがらみから離れ、一国一城の主になりたい」と、独立開業を視野に入れる先生も多いのではないでしょうか。しかしいざ開業に向けて情報収集を始めると、「建築資材の高騰で、見積もりが想定の1.5倍になった」、「好立地にはすでに競合クリニックがひしめいている」といった厳しい現実に直面し、二の足を踏んでしまうというご相談を弊社でも頻繁にお伺いします。
「莫大な借金を抱えて、本当に患者さんは集まるのだろうか?」その不安は、決して杞憂ではありません。人口減少とクリニックの飽和が進む現代において、更地に建物を建てて患者数ゼロからスタートする「新規開業」は、かつてないほどハイリスクな挑戦となりつつあります。
そこで今、賢明な医師たちの間で急速にスタンダードになりつつあるのが、既存のクリニックを引き継ぐ「第三者承継(M&A)」という選択肢です。「他人の作ったクリニックなんて」と思われるかもしれませんが、実はこれこそが、開業リスクを最小限に抑え、初月から黒字化を目指せる最も合理的な戦略なのです。本記事では、なぜ今「継承開業」なのか、そのメリットとリスク、そして私たち紹介会社だからこそ知る「絶対に失敗しない案件の見極め方」について解説していきます。ぜひ、将来の選択肢の一つとしてご一読ください。
1:なぜ今、新規開業ではなく「第三者承継(M&A)」が増えているのか?
これまで、医師の開業といえば「新規開業」が王道でした。しかし、ここ数年でそのトレンドは大きく変化しています。その最大の背景にあるのは、昨今の物価上昇に伴う建築コストの劇的な高騰です。
数年前であれば数千万円で建ったクリニックも、今や資材費と人件費の高騰により、億単位の投資が必要になるケースも珍しくありません。さらに、都市部では駅前の好立地テナントは争奪戦となっており、集患に有利な場所を確保すること自体が困難です。
一方で、地域医療を支えてきた団塊の世代の開業医たちが引退時期を迎えています。後継者不在で閉院を余儀なくされる「黒字クリニック」が数多く存在するのです。高コスト・高リスクな新規開業を避けて、既存の資産と患者基盤を活かす継承開業へ。このシフトチェンジは、経済合理性を重視する30代〜50代の医師にとって、必然の流れと言えるでしょう。
では、具体的に承継開業は、先生方のキャリアにどのような「実利」をもたらすのでしょうか?単に「初期費用が安く済む」という話だけではありません。ビジネスの観点から見た時、そこには新規開業では絶対に手に入らない「圧倒的なアドバンテージ」が存在します。次章で、その5つの強みを詳しく解説致します。
2:【メリット】成功の確度を高める5つの理由。「既存の基盤」こそが最強の武器
継承開業が選ばれる理由は、単に「楽ができるから」ではありません。ビジネスとして見た時に、新規開業よりも圧倒的に「成功確率(勝率)」が高いからです。具体的には、以下の5つの「引き継げる資産」が、開業直後の不安定な経営を強力に支えます。
➀.初月から「黒字化」が見込める(患者様と保険診療の引き継ぎ)
新規開業の場合は認知されるまでに数ヶ月〜数年かかりますので、その間は赤字になることになります。しかし継承開業では、何年も通院している「かかりつけ患者」という顧客基盤をそのまま引き継げます。また、スムーズな手続きを行えば保険診療のタイムラグも最小限に抑えられるため、開業初月から安定した医業収入(キャッシュフロー)が確保でき、精神的な余裕を持って診療に集中できます。
➁.採用コスト&教育不要(熟練スタッフの引き継ぎ)
昨今、医療事務や看護師の採用難易度は極めて高く、1名採用するのに数十万円〜百万円単位の紹介料や広告費がかかることも珍しくありません。承継開業で既存スタッフを雇用継続できれば、これらの採用コストが浮くだけでなく、電子カルテの操作や地域の患者さんの情報を熟知した「戦力」が初日から手に入ります。採用と教育の手間がかからないことは、院長にとって最大の時短になります。
➂.銀行融資が通りやすい(「実績」がある強み)
ここが見落とされがちな大きなメリットです。新規開業の融資審査は「事業計画書(予想図)」で行われますが、継承開業(M&A)の場合は過去の確定申告書や決算書という「確かな実績」をベースに審査されます。「現実にこれだけ利益が出ている」という証拠があるため、金融機関からの信用が得やすく、譲渡対価や仲介手数料が発生したとしても、スムーズに好条件での融資を引き出しやすい傾向にあります。
➃.初期投資を劇的に圧縮(医療機器・内装の引き継ぎ)
レントゲン、エコーなどの高額な医療機器や、こだわりの内装をゼロから揃えると膨大な資金が必要です。継承であれば、減価償却が進んだ資産を安価に引き継ぐことが可能です。 初期投資(イニシャルコスト)を低く抑えられれば、その分を運転資金や将来の投資に回すことができ、筋肉質な経営体質を作ることができます。
➄.「地域医療を守る」という社会的意義
経営面だけの話ではありません。先生が継承することで、その地域から「かかりつけ医」がなくなることを防ぎ、患者さんの健康と、そこで働くスタッフの生活(雇用)を守ることができます。「自分の利益のためだけでなく、地域のために医院を存続させる」。この高い志とストーリー性は、地域住民からの信頼を早期に獲得する大きな武器となります。
ここまでお読みいただくと、「継承開業こそが最強の開業術だ」と思われるかもしれません。 確かに、成功すればこれほど効率的で意義のある手段はありませんが、そこには「既存のものを引き継ぐ」からこそ発生する、特有の落とし穴も存在します。 「安かったから飛びついたが、結果的に大損をした……」 そんな事態を避けるため、メリットの裏側に潜む継承開業のリスクについても、お伝えいたします。
3:【リスク】安易な飛びつきは危険。「負の遺産」を引き継がないために
メリットばかりではありません。「初期費用が安いから」「売上が立っているから」という理由だけで飛びつくと、後から想定外のトラブルに巻き込まれる危険性があります。 特に注意すべきは、数字には表れにくい「人」と「隠れた負債」の問題です。
➀.設備の老朽化とDXの遅れ(紙カルテ問題)
建物や内装が古い場合、配管の水漏れや空調の故障など、継承直後に高額な修繕費が発生するリスクがあります。また、見落としがちなのが「カルテ」です。前院長が紙カルテを使用していた場合、電子カルテへの移行作業(過去データの入力やスキャン)に膨大な労力とコストがかかります。そのまま紙で運用するにしても、保管場所の確保や検索性の悪さは、現代的な効率経営の足枷となります。
➁.前院長の「診療スタイル」とのギャップ
「前の先生は話だけで薬をくれたのに」「もっとゆっくり話を聞いてくれた」患者さんは、無意識に前院長と後任の先生を比較します。前院長がカリスマ的であったり、医学的には古くても患者様受けの良い治療(過剰な投薬やサービスなど)を行っていた場合、先生が標準的な医療を行おうとしても「冷たい」「合わない」と判断され、以前の診療スタイルとのギャップから患者さん離れが起きるリスクがあります。
➂.既存スタッフの質と「お局様」問題
スタッフを引き継げることはメリットですが、逆に言えば「質の悪いスタッフも引き継いでしまう」リスクがあります。特に、長年その医院を取り仕切ってきた古参スタッフ(いわゆるお局様)が、新しい院長の方針に従わず、「前の先生の時はこうだった」と改革を拒むケースは後を絶ちません。最悪の場合、院長派と古参派で派閥ができ、職場環境が崩壊することもあります。
➃.承継後の前院長との「距離感」
引き継ぎのために前院長に一定期間残ってもらうことは有効ですが、その関わり方には注意が必要です。経営権を譲ったはずなのに、前院長に「私が作ったクリニックだ」という意識が残っているケースがあります。 そうすると新しい院長の診療方針や経営判断に口を出してくるケース(院政を敷こうとする)に繋がり、指揮命令系統が二つあることからスタッフが混乱し、新体制への移行がスムーズに進みません。
➄.簿外債務のリスク(特に医療法人M&A)
特に「医療法人の出資持分譲渡(法人の買収)」を行う場合、法人の権利義務をすべて引き継ぐことになります。ここで怖いのが、貸借対照表(B/S)には載っていない「簿外債務」です。代表的なものは「スタッフへの未払い残業代」や「社会保険の未加入」、あるいは「訴訟リスク」などです。これらはデューデリジェンス(買収監査)で徹底的に洗い出さないと、承継後に突然、多額の支払いを迫られることになります。
このようなリスクを並べると、「やはり自分にはハードルが高いのではないか」「ババを引かされるのは怖い」と不安に感じる先生もいらっしゃるかもしれません。しかしこれらは、「見るべきポイント」さえ知っていれば、事前に回避できるリスクばかりです。では、数ある情報の中から、手を出してはいけない「地雷案件」を避け、将来性のある「優良案件」だけを見抜くには、一体どこを確認すれば良いのでしょうか?私たちプロのコンサルタントが、案件の良し悪しを判断する際に必ずチェックしている「4つの極意」を公開します。
4:【プロの視点】紹介会社はここを見る!「良い承継案件」を見極めるチェックポイント
私たちメディカルプラスのような仲介会社が、案件を精査する際に注目している「優良案件の条件」をご紹介します。表面的な数字だけでなく、以下の4点を必ず確認してください。
➀.売却理由が「ポジティブ」か
最も狙い目なのは、「高齢による勇退」や「体調面でのリタイア」など、経営自体は順調だが続けられないというケースです。逆に「近隣に強力な競合ができて患者が減ったから手放したい」という案件は、承継後のV字回復に相当な経営努力が必要となります。
➁.診療圏調査では見えない「患者の質」
単に患者数が多いだけでなく、患者層(年齢、疾患内容)が先生の専門性とマッチしているかを確認します。また、極端に低い診療単価で数を回しているクリニックの場合、丁寧な診療を目指す先生が承継すると収益が悪化する可能性があるため注意が必要です。
➂.承継後の「引き継ぎ期間」の設定
良質な案件は、契約して終わりではありません。数ヶ月間は前院長が非常勤として残り、患者さんに「今度の新しい先生は信頼できるよ」と紹介してくれる期間(並走期間)を設けられる案件は、成功率が格段に高まります。
➃.仲介会社のスタンス(「ゴール」か「スタート」か)
ここが最も重要と言っても過言ではありません。残念ながらM&A仲介会社の中には、「契約成立(成約)」をゴールと捉え、ハンコを押した後の経営には関知しない業者も存在します。 しかし、先生にとっては「開業」こそが、経営者としての本当のスタートです。
選ぶべきは、「継承は新たなスタート」という理念を持ち、契約後も「集患(マーケティング)」や「スタッフ採用」などの実務面までサポートしてくれるパートナーです。 特に、スタッフが退職してしまった際の補充や、新しい患者様を呼ぶためのWeb戦略など、運営の要となる部分までバックアップ体制があるか。ここが、開業後の生存率を分ける決定打となります。
とはいえ、いくら優良案件だと頭では分かっていても、「いきなり数千万円の契約書にサインをするのは怖い」、「万が一、経営者として適性がなかったらどうしよう」と足踏みしてしまう先生も多いはずです。実は、M&Aだからといって「即購入」だけが正解ではありません。昨今増えているのが、まずはリスクを負わずに現場に入り、内情を確かめてから決断するいわば「転職」と「開業」のいいとこ取りをした、新しいキャリアの形です。最後に、石橋を叩いて渡りたい先生にこそおすすめしたい、最も安全なスタート方法についてお話しします。
5:【選択肢】「転職」の延長線上に「承継」がある。柔軟なキャリア形成
これまで「転職」と「開業」は全く別のルートと考えられてきましたが、現在はその境界線が曖昧になっています。 例えば、まずは「院長候補(管理医師)」として転職し、実際の経営状況や地域のニーズ、スタッフの動きを内部から確認した上で、1〜2年後に譲渡を受けるという「お試し期間付きの継承」も増えてきており、弊社では「継承求人」と定義づけております。
「開業デモ」として活用する。賢い管理医師の選び方
ただし、どんな管理医師の求人でも良いわけではありません。
将来の成功確率を上げるためには、以下の視点で求人を選ぶことが重要です。
「経営」に深く関与できる求人を選ぶ
診療だけでなく、スタッフの採用面接、集患のための広告戦略、毎月の損益(P/L)管理など、経営の実務を任せてもらえる求人を探しましょう。中には、将来の独立開業を前提に応援してくれる懐の深い医療機関も存在します。
リスクゼロの「開業デモ」と捉える
こうした環境で管理医師を務めることは、いわば「開業デモ(予行演習)」です。 少し極端な言い方ですが、「法人の資本(人のお金)」を使って経営に挑戦できるため、個人の借金を背負うことなく、トライ&エラーを繰り返すことができます。ここで失敗しても致命傷にはなりません。この経験は、ご自身で開業する際の強力な武器になります。
「名義貸し」のような案件は避ける
一方で、管理医師としての名義だけを必要とし、実質的な権限がない求人も存在します。これらは業務負荷が軽いケースも多いですが、経営者としての筋肉は全くつきません。「開業のデモ」にはならないため、将来独立を志す先生にはお勧めできません。
6:まとめ
今回は、医師の新しい開業スタイル「第三者承継(M&A)」について解説いたしました。
建築費高騰や市場の変化により、「ゼロからの開業」だけが正解ではない時代が到来しています。既存のクリニックを引き継ぐことは、リスクを抑え、確実なスタートダッシュを切るための有効な手段です。しかし、そこには「老朽化」や「人間関係」、そして「隠れた債務」といった特有のリスクも潜んでいます。
成功の鍵は、表面的な価格だけに惑わされず、リスクを洗い出した上で、「開業後の運営(集患・採用)まで共に走ってくれるパートナー」を選ぶことにあります。 メディカルプラスでは、単なるマッチングにとどまらず、先生が地域で理想の医療を実現するための「新たなスタート」を、集患支援や人材採用の面からも全力でバックアップいたします。
良い継承案件は、一般の不動産情報のように表に出ることは少なく、水面下で決まってしまうことがほとんどです。「いつかは開業したい」とお考えであれば、まずは情報収集から始めてみませんか? 転職と開業、両方の視点を持つコンサルタントが、先生のキャリアプランに最適な「継承案件」や「院長候補求人」をご紹介いたします。
少しでも興味をお持ち頂けるようでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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