Q1.ふれあい耳鼻咽喉科を開院されて約1ヶ月経ちました。現在の心境をお聞かせください。
私以外のスタッフは全員耳鼻咽喉科の勤務環境は初めての方たちばかりでした。昨年の秋に入職されたスタッフ達以外に、開院前の準備期間が2週間ほどのスタッフや、2月13日の開院以降に加わったスタッフもいますが、皆さん非常に上手に業務をこなしてくれています。施設の運営が円滑に進んでいることに感謝しています。
Q2.ふれあい耳鼻咽喉科の特徴をお聞かせください。
当クリニックには乳幼児からお年寄りまで幅広い年齢層が来院されます。全般的に標準的な医療を心がけています。地域の方が耳鼻咽喉科に期待するような一般的かつ最良の医療を提供し、耳鼻咽喉科領域において、この地域の患者さんの病気によって低下したQOL(生活の質)の改善に貢献することを目指しています。法人理念としては、地域に寄り添った診療を重視しています。当院診療圏でも地区によって特徴がありますし、もちろん患者さんについてもその人その人のキャラクターがありますから、お一人ひとりとしっかり向き合った医療を提供しています。地域の皆さまに、より頼りにされるようにしていきたいです。
Q3.ふれあい耳鼻科の職員との関係はどうですか?
職員は落ち着いた年齢層が中心で、仕事への向き合い方に熟練した考え方を持っている方たちばかりです。自主的に考える、あるいは勉強をして、言わないことでも自分たちで業務に取り組んでくれています。
社会経験を重ねていて人としての成熟度が高い職員が多いので、適切な対応ができ安心しております。知識面は、各自に耳鼻咽喉科の教科書を貸し出したり提供したりして、又、勉強会等を開催して向上に取り組んできました。
Q4.転職を考え始めた時期や理由などについてお話ください。
前職の病院の耳鼻咽喉科外来では、非常勤医師による診療体制が長い年月続いていた為、外来スタッフたちが拠点病院の耳鼻咽喉科専門医常勤体制の医療現場の大変さを知らない状況でした。
外来診療の分野では、午前中の外来診療に関しては拠点病院としての環境にあり満足していました。しかし、看護師たちが担当していた診察器具の滅菌出しと回収・記録作業が元々時間のかかるシステムだったため、午後診療に入院患者や通院点滴治療患者が発生すると外来看護師に残業が発生しました。これを解消するために、一旦開始した午後診療を全曜日中止せざるを得なくなりました。これにより、拠点病院の耳鼻咽喉科専門医の診療を必要とする患者さんたちが午後にも毎日おられましたが、耳鼻咽喉科では午後は受け入れが出来なくなってしまいました。
手術の分野では、拠点病院の耳鼻咽喉科診療体制を回復するために、全身麻酔を要する手術の器械の更新の為の作業やクリティカルパス作りを行いましたが、外来スタッフは自分たちの業務増加を懸念し、拒絶的な勢力が強かったです。手術器械の更新申請とクリティカルパスの作成は、手術室の看護師と病棟看護師長の協力によって進みました。しかし手術器械の購入会議で私と外来スタッフたちとの間柄がまだ定着していないとされ手術器械は購入見合わせとなり、全身麻酔を要する手術は開始できませんでした。
入院診療の分野では、全身麻酔の手術が開始できなかったため、保存的治療の入院患者のみでした。入職後5か月間ほどは水準的治療に学会で報告のあった大学病院や他の大病院の臨床試験の内容を取り入れて、良い結果を示していました。しかし午後の耳鼻咽喉科外来からの入院受け入れが無くなり、またその後、突発性難聴やハント症候群の入院患者への私の保存的治療の内容にかなり制限が加わり(血中の浸透圧に重要な血清アルブミン値が低下していた100dB以上の重度突発性難聴の患者へのアルブミン製剤輸血を皮切りに、ハント症候群に対する学会セミナーで提示された抗ウイルス薬脳炎・髄膜炎量の上限量と宿題報告の内容にあったステロイド鼓室内投与、に制限が加わり)、治癒まで至らないことも多い水準的治療にとどめざるを得なくなり、それらの患者が入院する意味があまりなくなり、入院中の患者も1日1人いるかいないかの状況となりました。
外来患者数に関してですが、選定療養費(一般病床が 200 床以上の病院で、高度・専門医療を行うために、紹介状の無い患者に対して診療費に上乗せして費用を支払わせ、外来患者の受診を制限する制度)の初診料への上乗せの為に元々少なめだったのですが、午後診療を行えなくなったことと、私の高度・専門的な保存的医療へかなり制限が加わったこと、又、全身麻酔の手術が始まらなかったことによって、患者数は頭打ちになりました。
拠点病院の耳鼻咽喉科専門医の常勤医として、全身麻酔の手術を行うことがなかなか叶わない状勢となり、又、入院中の患者も1日1人いるかいないかの状況となり、さらに、徐々にですが増えていた1日外来患者数が少なめなままで頭打ちとなり、常勤医としての存在意義が薄くなり、入職後1年で退職しました。
転職を考え始めた時期は、前職の病院を退職してからです。大学の医局を退局して以降、複数の病院の就職・退職を繰り返していた為、暫く考える期間を置いたのち、病院勤務に絞らずに診療所勤務も選択肢に入れ、就職活動を行いました。大学の医局を退局して以降に勤務した病院の中には、全身麻酔の手術のニーズが低い病院があったり、職場の人間関係に悪影響を与える要因になりそうな病院もあったため、全身麻酔の手術はあまり行ってきませんでしたが、その分、手術以外の入院患者に対する保存的治療の力が伸び、外来診療も診断治療の力が増していきました。そしてこれまでの経緯から、全身麻酔の手術や病棟のフィールドはあきらめ、外来診療の力に重きを置かれる「診療所」に就職を希望しました。
Q5.医師人材紹介会社が沢山ある中、どのような判断基準で会社を選びましたか?
転職活動開始時は「どの人材紹介会社に依頼しようかな」という切り口ではなかったです。耳鼻咽喉科医の募集の中から、その募集は地域にとって本当に必要なのか、まずその判断基準で取捨選択しました。その地域に「ここに耳鼻咽喉科があって良かった」と思われるような需要があって、そういった必要性の中での勤務を希望していました。
様々な求人の募集要項を見ているうちに、メディカルプラスキャリアさんからのスカウトメールをきっかけに、所沢の地域での耳鼻咽喉科の需要と必要性を感じ取りました。そういったニーズがある「地域での必要性」を軸として、複数の人材紹介会社を利用しつつ、様々な求人について面談や試験採用を経て、最終的にはメディカルプラスキャリアさんと一緒に進めることになりました。
Q6.先生が転職に際して一番優先順位の高かったことは何でしょうか?
私の耳鼻咽喉科医としての特徴は、入院患者に対する保存的治療の力や、外来患者に対する診断治療の力であり、又、全身麻酔の手術の技量について医師免許取得後7年目以降から行っていくサブスペシャリティの手術レパートリーの広さを持っていない為、優先させたのは、入院患者に対する保存的治療の必要性や外来患者に対する診断治療の必要性です。
しかし、元々、耳鼻咽喉科医療は、保存的治療だけの入院に対する需要は全身麻酔を要する手術入院と比べてはるかに低く、病院に常勤医として就職しようとすれば、結局は、出来る全身麻酔の手術の種類の多さ、幅が必要です。手術をあまり行わないと他の職員からわだかまりが生じます。その為、病院へ就職しないと行うことが出来ない病棟のフィールドは優先順位二番目で、外来患者に対する診断治療の必要性を最低限の優先にしていました。
私の外来診療の力は、現場での診療と平行して、研修医時代から専門医取得までは指導医の指導も時々受けながら基盤学会の日本耳鼻咽喉科学会のエキスパート達が執筆した出版物からも学び、専門医取得後は基盤学会の日本耳鼻咽喉科学会が行う講演会・講習会を大体毎年聴講しに行ったり、関連学会に少し聴講しに行ったり、学会編集の指針や学会会員の執筆論文で学んだりしながら、ついていきました。そのため、自由診療ではなく、標準的医療が核です。
一番優先順位の高かったことは耳鼻咽喉科領域での外来診療の標準的医療の必要性です。
又、たとえば年収ですが、求職者側が我儘を押し通すことで高い年収を得られるケースもあるかもしれませんが、そういった事は望んでいなかったです。また自宅からの距離に関してもそれほど重視しませんでした。引っ越しもできますし。
Q7.転職活動で、特に印象に残っていることはありますか?
転職活動中のサポートは印象に残りました。加藤さんとの実践的な場面を想定した面談練習は忘れられない思い出で。コーヒー屋さんで紹介会社の方とこういった形で練習をしたのは初めてだったもので(笑)。予想される質問事項に答えさせてその答え方に対する客観的なアドバイスをして下さったことなど、(約8か月前のことですが)そのシーンを鮮明に覚えています。面接時に同行して下さって、ぐいぐいと(笑)採用決定まで進めて下さったおかげで助かりました。
理事長が夜遅い時間に現地所沢のこのクリニックまで赴いて下さり面談を行って下さりました。理事長ご自身の長野県でのご経験をお話して下さり、大変よくして下さりました。
Q8.メディカルプラスキャリアの対応はいかがでしたでしょうか?
メディカルプラスキャリアさんの対応は、他の転職支援会社と一味違いました。寄り添ってくれる印象がとても強かったですし、実際責任感を持って取り組んでくれました。特に面談に向けた(一般的な準備ではなく)個別の準備や、別に時間と場所を設けた直接的な面談指導は、あまり経験しないようなものでした。先ほどのコーヒー屋さんの話のように、しっかり面談対策をしてくれて、客観的な意見を下さるので、その姿勢に嬉しさを感じましたね。責任感が本当に違うと思います。
Q9.これから転職をお考えの先生方に一言メッセージをお願い致します。
そうですね。転職を考えている地域での需要と供給について調べて考えて、需要が本当にあるのかどうか、地域の現在の医療供給体制を変える必要性が本当にあるのかどうかを、吟味することが大切だと思います。私自身幾度か転職をしていて、転職時には実践していることです。必要とされている地域に自分の力を提供することを重視すると、患者さんも喜び、自分のやりがいに繋がると思います。又、転職を繰り返すうちに知っていったことですが、転職先の医療機関のスタッフたちが現在の医療供給体制を変えることを望んでいるかどうかを知ること、が次に重要です。
転職を検討されている方には、希望や要望があることと思いますが、自分でも必要性を調べたり、考えたり。まずはしっかり必要性を考えることをおすすめします。
谷本先生、貴重なお話をありがとうございました。