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【コラム】精神保健指定医のメリットと取得方法

コラム

こんにちは。医師転職支援の「メディカルプラスキャリア」です。
本日のコラムは「精神保健指定医」をテーマにお伝えします。精神科医としてのキャリアを考えるうえで、精神保健指定医の取得を目指している医師もいることでしょう。精神保健指定医とは何か、また精神科専門医や一般的な精神科医との役割の違いなどについて解説いたします。精神科のキャリア形成をお考えの先生にご参考いただけますと幸いです。

※なお本記事は2024年1月時点の情報です。精神保健指定医の申請・更新をはじめ最新情報については厚生労働省の専用ページをご参照ください。
《厚生労働省HP》精神保健指定医
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/seishinhokenshiteii.html

1:「精神保健指定医」とは?

精神保健指定医とは、精神保健福祉法に基づき、重度の精神障害を持つ患者さんに対して、本人の意思によらない医療保護入院・隔離・身体拘束など、一定の行動制限や措置入院の解除判断が可能な精神科医です。

精神科の医療現場においては、患者さんやご家族などの周囲の安全を確保するために、やむを得ず強制入院などの措置が必要となるケースがあります。これは入院患者さんにとっては人権に関わる行為ともなりますので、治療にあたる精神科医は医学の知識だけでなく、人権にも十分に配慮しながら医療を行う資質を備えている必要があります。

1987年(昭和62年)、精神衛生法が改正を経て精神保健法に名称が変更されると同時に、精神保健指定制度が創立されました。この制度により精神保健指定医だけが、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第19条4に定められた本人の意思によらない強制入院(措置入院、緊急措置入院、医療保護入院など)について、任意入院以外の判断を職務として遂行できる資格を得ていることになります。

2:「精神保健指定医」の業務内容

精神保健指定医には、医療だけではなく人権に関わる部分まで広く責任がありますが、それゆえにやりがいのある業務とも言えるでしょう。精神保健指定医の具体的な職務は、精神保健福祉法に基づき下記の通りとなっています。

【入院時】~精神保健指定医の業務

①.措置入院、緊急措置入院時の判定(※)
②.医療保護入院時の判定
③.応急入院時の判定

【入院中】~精神保健指定医の業務

④.措置入院者の定期病状報告に係る診察
⑤.医療保護入院者の定期病状報告に係る診察
⑥.任意入院者の退院制限時の診察
⑦.入院者の行動制限の判定

【退院時】~精神保健指定医の業務

⑧.措置入院者の措置症状消失の判定
⑨.措置入院者の仮退院の判定
⑩.措置入院の解除の判定 (都道府県知事等が指定する指定医による診察の結果に基づく解除)(※)
⑪.任意入院者のうち退院制限者、医療保護入院者、応急入院者の退院命令の判定(※)

【移送】~精神保健指定医の業務

⑫.措置入院者・医療保護入院者の移送に係る行動制限の判定(※)
⑬.医療保護入院等の移送を必要とするかどうかの判定(※)

【その他】~精神保健指定医の業務

⑭.精神医療審査会委員としての診察(※)
⑮.精神病院に対する立入検査、質問及び診察(※)
⑯.精神障害者保健福祉手帳の返還に係る診察(※)
⑰.上記②~⑨の職務を行った際の診療録記載の記載義務
(※)=公務員として行う精神保健指定医の職務になります(都道府県知事等が地方公務員等として委嘱)。

3:「精神保健指定医」と「精神科専門医」はどう違う?

それでは、この「精神保健指定医」「精神科専門医」はどのような違いがあるのでしょうか。
精神保健指定医と精神科専門医は異なる資格となっており、それぞれについて解説いたします。

「精神保健指定医」は前述の通り、「精神保健福祉法に基づいて指定される医師」です。本人の意思によらない強制入院などの措置を取ることができ、重篤な精神障害を持つ患者さんの保護入院や強制入院の判断が含まれていることから、特定の研修を受け、試験に合格しなければこの資格を取得することができません。

一方「精神科専門医」は、「精神医学の専門的な知識と技術を持つ医師」を指します。ほかの診療科目の専門医と同様に、学会により認定されている資格です。精神科の場合「公益社団法人日本精神神経学会」によって認定される資格で、日本精神神経学会の会員となった上で所定の研修プログラムを修了し、精神科専門医試験に合格することで資格を取得できます。精神保健指定医と異なり本人の意思によらない強制入院の権限はなく、強制入院が必要と判断をした場合は、精神保健指定医に診察を依頼しなければなりません。
まとめると、以下のようになります。

■精神保健指定医
•精神保健福祉法に基づいて指定される医師である
•この資格を持つ医師は、精神障害者の保護入院や治療に関する特別な権限を有する
•取得には一定の基準を満たした研修を受け、試験に合格する必要がある

■精神科専門医
•精神医学の専門的な知識と技術を持つ医師である
•日本精神神経学会などの専門学会が認定する資格である
•長期にわたる専門的な研修を受け、試験に合格する必要がある

4:「精神保健指定医」のメリットは?

ここからは精神保健指定医のメリットについて記載いたします。専門医のみを持っている場合とはどのような違いがあるのでしょうか。精神保健指定医には様々なメリットがありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。

■メリット1:踏み込んだ医療の実践
前述の通り精神保健指定医でしかできない業務もあり、その時々で患者さんに最適な医療を提供することが可能です。これは患者さんだけでなく、そのご家族や地域の生活や安全を守ることにも貢献することになるため、責任は大きいですが、同時にやりがいも大きいのではないでしょうか。

■メリット2:医師転職市場での優位性
医師転職市場では通常の精神科医だけでなく、専門医をもった精神科医と比べても精神保健指定医をお持ちの医師は優遇されています。実際にメディカルプラスキャリアにご相談いただく精神科求人にも「精神保健指定医必須」となっているケースが少なくありません。
理由としては、精神病院では常勤の精神保健指定医を配置することが必須であり、クリニックも含め常勤の精神保健指定医の有無によって診療報酬加算が変わってくるため経営に大きくかかわってきます。そのため「精神保健指定医をお持ちの方のみ募集」や、精神保健指定医の取得の有無により採用時の給与額も異なっていることも多く、将来にわたり収入を上げていきたいとお考えの精神科医の場合には「精神保健指定医」の取得をお勧めいたします。

■メリット3:長期勤務が可能
医療施設から見た場合、上記で説明した診療報酬加算に関わる部分だけでなく、例えば新規に精神科の医師を募集する際も「精神保健指定医〇名在籍」などを明示することにより、精神保健指定医を持っていない精神科医も精神保健指定医の専門的な知識、権限や経験をお持ちの先生がいることにより、安心して勤務できる環境であることをアピールすることもできるため、年齢を重ねたあとも長く医療施設に在籍し勤務していくことが可能です。

5:「精神保健指定医」になるための取得条件と更新方法は?

様々なメリット、またやりがいのある精神保健指定医ですが、取得条件はどのようなものでしょうか。取得方法は精神保健福祉法第18条「次に該当する医師のうち第十九条の四に規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を、精神保健指定医(以下「指定医」という。)に指定する。」とあります。以下抜粋いたします。

1・五年以上診断又は治療に従事した経験を有すること。
2・三年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。
3・厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は
治療に従事した経験を有すること。
4・ 厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修
(申請前三年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。
《厚生労働省HP》精神保健指定医
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/seishinhokenshiteii.html

上記を個別に解説いたします。

1・五年以上診断又は治療に従事した経験を有すること。
こちらについては診療科目を問わず医療の実務経験の有無を指しており、初期研修医の期間も実務経験に加えることができますので、医師免許取得から5年でこちらの要件を満たすことが可能です。

2・三年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。
こちらは精神科の実務経験を問われています。
初期研修修了から精神科の専攻医などで実務経験を積まれた先生には、初期研修終了から3年間勤務することによりこの2の要件と、上記1の要件を同時に満たすことができます。
また精神科に転科された先生の場合は、転科されてから3年の精神科での実務経験が必要となっています。

3・厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること。
こちらは「厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験」を確認するためにケースレポートと口頭試験が行われます。
ケースレポートは5分野5症例を集めて提出し、その上で口頭試問が実施されます。
ケースレポートについては細かく指定されていますので下記をご参考にしてください。
《厚生労働省HP》精神保健指定医の新規申請について
https://www.mhlw.go.jp/content/000970889.pdf

4・ 厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(申請前三年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。
こちらは「精神保健指定医研修会」の講習に参加することが必要になります。3日間の日程で行われ、内容は精神保健福祉法などの法制度をメインにとなっております。詳しい日時の確認は下記URLをご確認ください。
精神保健指定医研修会
https://www.shiteii.com/

6:最後に

ご自身のキャリアを考えるうえで、精神保健指定医の取得もひとつのキャリアアップの方法ではないでしょうか。精神保健指定医は医療を提供するだけでなく、患者さんの人権を守り、家族や地域社会と協働しながら患者さんの社会復帰を促すやりがいを感じていただける業務かと思います。取得には要件がありますが、それだけに医療人として活躍するうえでの多くのメリットがあります。精神保健指定医の取得を支援してくれる医療機関の求人もございますので、メディカルプラスキャリアのエージェントまで是非お問い合わせください。

また、厚生労働省のHPには「精神保健指定医の新規指定申請に関するQ&A(令和5年1月1日時点)」が掲載されています。御不明な点などあればご確認ください。
《厚生労働省HP》精神保健指定医の新規指定申請に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000958826.pdf

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