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【コラム】医師の数は増えているのに足りない?医師偏在マップから読み解く理由

コラム

こんにちは。医師転職支援会社の「メディカルプラスキャリア」です。本日は「医師の数は増えているのに足りない?医師偏在マップから読み解く理由」のコラムとなっています。
医師不足は長年にわたり日本の医療現場における重要課題とされてきましたが、実は医師数自体は年々増加しております。しかしながら、地域によっては依然として医師が足りず、満足な医療サービスを提供できない現実がございます。なぜ、医師の数が増えているにもかかわらず、医師不足が続いているのでしょうか?今回のコラムでは、医師の地域偏在という課題に着目し、医師偏在マップから見えてくる地域医療の現状とその背景について解説します。

1:医師数の増加とその背景

日本において医師数が増加している背景には、医療政策の強化や教育制度の充実が大きく影響しております。医師不足を解消し、医療アクセスの公平化を図るため、政府は医師の養成を増やす政策を推進してきました。具体的には、医学部の定員増加新設医科大学の認可などが行われ、医学生の数が増え、医師の供給が安定的に確保されています。

従来、医療現場では長時間労働が問題とされてきましたが、最近では勤務医の働きやすさを向上させる施策が進められています。これにより、より多くの医師が長期的に働きやすい環境が整い、医療従事者の確保につながり、さらに、女性医師の増加も医療現場の多様性向上に寄与しています。女性医師が働き続けやすい環境を整備することで、医療現場への参画が促進され、医師の数が増加しています。このような医療政策の強化や働きやすい環境の整備により、全体的な医師数は増加していますが、地域ごとに偏りが生じているため、医師不足が依然として課題となっているのです。

医師数の推移につきましては、厚生労働省の以下グラフをご参照ください。

*出典:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」P4~P5

2:医師の地域偏在が生む問題

医師の数が増加している一方で、日本では地域によって医師が偏在しており、これが医療格差を引き起こす大きな要因となっています。厚生労働省の医師偏在指標をもとにしたNHK提供の「医師偏在マップ」からも、都市部と地方での医師数分布に顕著な差があることが見えてきますが、人口減少が著しい過疎の地域だけではなく、都市部からそれほど離れていない地方の市や町でも、同じような問題が顕在化してきています。厚生労働省は医師の偏在対策に役立てるため、「医師偏在指標」を都道府県ごとと二次医療圏ごとに公表しています。

上記日本地図は都道府県ごとの医師偏在を表したもので、指標の数値が上位三分の一を「医師多数県」として黄土色に、また、下から三分の一の地域を「医師少数県」として青色で表示いたしました。各都道府県ごとに見ると、以下の数値となっています。

この指標は、医師偏在の状況を客観的に示すために地域ごとの医療ニーズ、人口構成、性別、年齢構成などを踏まえた計算式によって導き出されていて、相対的な状況を考えるのに役立ちます。

上記のマップを見ていただくと比較的、西日本に「医師多数県」が多く、東日本は「医師少数県」が多く見られることが確認できます。ただ、これはあくまで都道府県ごとの全体の数値となり、実際には自治体の中でも医師の多い地域、医師の少ない地域があり、二次医療圏ごとの偏在指標も公表されています。二次診療圏ごとの偏在指標については、同じく厚生労働省のデータをもとにしたNHKの提供する「二次医療圏医師偏在マップ」が分かりやすいためご参照ください。

二次医療圏の指標では、各都道府県の県庁所在地や大学医学部があるような地域では医師が多い状況ですが、都道府県ごとでは「医師多数県」とされていた東京都でも、「西多摩」や「島しょ部」などでは全国的に見ても低い数値になっています。

また、都市部の病院には専門医が多く在籍し、幅広い診療科が揃っているため、患者様は多様な治療を受けられますが、地方では医師数が不足し、診療科が限られているため、患者様が十分な医療サービスを受けられないことが少なくありません。この地域格差は、医療の質や患者様の利便性に直接影響し、地方では、特に緊急医療が必要な場合に医師が不足し、迅速な治療が困難になるケースがあり、患者様が都市部の医療機関まで長距離を移動せざるを得ないことも多いのです。

さらに、慢性的な医師不足により、一人の医師が抱える業務量が増加し、労働環境が厳しくなることで医師が地域を離れる「医師流出」の悪循環が生じやすくなります。このように、医師の地域偏在は医療サービスの不均等を生み出し、地域によって医療アクセスの差が生まれる原因となっています。医師偏在の問題は、患者様と医療従事者の双方にとって深刻な課題であり、地域ごとに医療資源が適切に分配される必要が求められています。

*参考:厚生労働省「医師偏在指標について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001005808.pdf

3:医師が都市部に集中する原因

ではなぜ都市部に集中するのでしょうか。その背景には、いくつかの要因がございますが、主な理由として、都市部での勤務が医師にとってキャリア形成や生活環境の面で魅力的であることが挙げられます。具体的に解説していきますので、ご確認ください。

キャリア形成と専門性の向上

都市部の医療機関は最新の医療設備や幅広い診療科を備えており、医師が高度な専門性を磨く機会が豊富です。特に、若手医師にとっては、経験を積むために都市部の病院やクリニックで働くことが有利に働くことが多く、そこでの研修や実務経験が将来のキャリアにとって大きなメリットとなります。また、都市部には大学病院や総合病院が多く、先端医療の研究に従事する機会や研修プログラムも充実しているため、スキルを高めたい医師が都市に集まりやすくなります。

生活環境の充実

医師だけでなくその家族にとっても、都市部は生活環境が整っていることが魅力です。都市には良質な教育機関、商業施設、交通インフラが揃っており、医師にとって生活の利便性が高いのが特徴です。子育てや教育の選択肢も多く、生活環境が充実しているため、家族を持つ医師にとっても都市部での勤務が魅力的と感じられます。

コミュニティとサポート体制の整備

都市部には多くの医療従事者が集まっており、相談し合える医療コミュニティやサポート体制が整っています。複数の医師がいる環境では、患者様の症例について議論したり、困難なケースに対してチームで対応できるため、医師にとって働きやすい職場と感じられます。また、都市部には医療以外のネットワークも多く、医師自身がキャリアや人間関係を広げやすい環境です。
これらの理由から、医師は都市部に集中しやすく、地方での医師不足が続く要因にもつながっています。この集中を緩和するためには、地方での働きやすい環境の整備や、医師が地方での勤務に魅力を感じる制度的なサポートが必要とされています。

4:医師不足解消に向けた取り組み

医師不足と地域偏在の問題を解消するため、日本ではさまざまな取り組みが進められています。特に、地方での医師確保と勤務環境の改善に向けた政策や技術革新が重要な役割を果たしています。ここでは、主な取り組みと今後の展望について説明します。

地域医療支援と奨学金制度

地方での医師確保に向けて、政府や自治体は地域医療に従事する医師に対する奨学金制度を提供しています。例えば、地域の医療機関で一定期間勤務することを条件に奨学金を返済免除する制度があり、医師が地方でキャリアをスタートしやすい環境を整えています。また、医学生のうちから地域医療を目指す人材を育成するために、地域枠を設けた医学部の入試や、地域医療を専門に学べる研修プログラムも増加しています。

遠隔医療(テレメディスン)の導入

ICT技術の進展に伴い、遠隔医療が導入され、地域医療の改善が期待されています。遠隔医療によって、地方に住む患者様が都市部の専門医とつながり、診療や指導を受けられるようになり、医師不足を補完する手段として注目されています。特に、慢性的に医師が不足している地域では、遠隔医療により初期診断や簡単な処置を提供し、患者様が専門治療を早期に受けられる環境が整えられつつあります。

医師の働き方改革

医師の過重労働を改善するため、働き方改革も推進されています。長時間労働や過密スケジュールが医師の都市集中と地方離れを助長しているため、地方医療機関での勤務環境を整備し、医師が無理なく働ける体制を整えることが重視されています。また、夜間や休日の勤務を交代で担う体制や、勤務時間を柔軟にする制度など、医師が働き続けやすい仕組みが導入されています。

5:まとめ

今後、これらの取り組みが進むことで、医師の地域偏在が少しずつ改善され、地方でも安定した医療サービスが提供されることが期待されています。特に、遠隔医療技術の発展医師不足解消の有力な解決策となり、地方と都市部をつなぐ新たな医療サービスの形が確立されるでしょう。また、働き方改革によって医師が地域で働きやすくなり、医療人材がより分散されることで、全国で質の高い医療が提供される未来が期待されています。こうした施策と技術の進展により、医師不足と地域格差が緩和され、すべての地域で持続可能な医療体制が整うことが今後の目標です。

いかがでしたでしょうか。今回は「医師の数は増えているのに足りない?医師偏在マップから読み解く理由」のコラムとなっておりましたが、下記記事「オンライン診療の目的とメリットについて」も合わせてご一読いただけますと幸いです。

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